ウランバートル・ロガリズム校 ドリームマップ授業
ドリマ先生:若林明子・光信嘉久・秋田稲美
授業日時:2014/03/11日~13日
対象学年:5年生 6年生 7年生
レポート:光信嘉久
モンゴルのウランバートルにある小中高一貫教育の私立校「ロガリズム」よりドリームマップ授業の依頼があり、3名のドリマ先生がモンゴル入り。3日間連続で、5・6・7年生のモンゴルの子どもたちにドリームマップ授業を行いました。
1 主旨
海外でのドリームマップ普及に関する可能性を探る
※ドリームマップとは、目標達成ツールです。「将来なりたい自分の姿をイメージしながら、台紙の上に写真や文字で表現していき、自己実現に向かうための姿勢を養います。」
2 事例
背景:飯島先生《沼津の学校教員、高野さんと知り合い》が企画
日程:3日間 《3月11日から3月13日》
時間:9時から15時まで 《前半9時から13時40分 後半14時20分から15時》
場所:ロガリズム 《モンゴル・ウランバートル市内 私立 小中高一貫教育》
対象:71名 《5年生:39名 ・6年生:16名・7年生:16名》
参加者
モンゴル : オドホイ校長 ソソロさん《教育庁、ウランバートル市内9地区の指導主事》 ナランさん《教育大学講師》 バイヤルマさん《通訳》
日本 : 秋田先生 若林先生 飯島先生 山本さん《通訳》 光信
講義構成
11日 飯島先生 12日 秋田先生 13日 リレー形式(UBSテレビ撮影)
打ち合わせ
11日 校長先生と当日の講義内容の振り返り
12日 ソソロさんとナランさんとの打ち合わせ・ウィッシュドリマの紹介
13日 校長先生とマネージャーと今後の展開について & JICA今吉様との打ち合わせ
3 気付いた点:テーマ別
Ⅰ 教育現場
ⅰ 地域による教育格差が大きい
ⅱ 授業構成は2部制もしくは3部制になっている
ⅲ 教師はほぼ全員が女性である
ⅳ キャリア教育の考え方が重要になってきている
ⅴ 語学教育が進んでいる。
ⅵ 同じ学年に所属する年齢に幅がある。
Ⅱ 普及対象
ⅰ 日本とモンゴルの関係
ⅱ ビジネスとしての関係
4 気付いた点:詳細と背景
Ⅰ ? ⅰ 地域による教育格差が大きい
詳細
貧富格差が激しく、教育設備や教員への待遇も格差があり、先生の質が安定せず指導内容にばらつきがある。
背景
義務教育期間中は、全額国が負担しており、各学校への予算は生徒数に応じて配分されている。そのために、首都に予算や生徒が集中し、教員と生徒のバランスが悪いところが多い。
備考
「ロガリズム」に関しては、私学であるため、比較的富裕層の生徒達が通っている。教員と生徒のバランスに関しては、現在一クラス当り2名の先生が常駐し、1人当たり20人の生徒を担任している。
ⅱ 授業構成は2部制もしくは3部制になっている
詳細
公立・私立共に午前の部と午後の2部に分かれているケースが多く、公立の中に3部制がある。
背景
親の仕事時間に応じた形が導入されているため、2部制 3部制の構成になっている。授業時間が短くなっているように感じるが、休憩時間がかなり少なく、40分授業を6コマ確保できるようにはなっている。
備考
「ロガリズム」に関しては、2部制であると聞いたが、具体的な時間帯を確認できていない。
ⅲ 教師はほぼ全員が女性である
詳細
教員ならびに教育に関わる職の性別は女性が多い。
背景
モンゴルが特徴的であり、女性の教育レベルは男性よりも上で、進学率や就業率に関しても同様のことが立証されている。特に教育現場では、教育は女性が担うとの概念もあいまって女性教師が9割を占めており、教育行政に関わる長も女性である。
備考
「ロガリズム」に関しても、同様で、校長・マネージャー《教頭》・教員のすべてが女性でした。また、教育庁の長 ・ 教育大学の講師《教員育成を担当》 も女性でした。
ⅳ キャリア教育の考え方が重要になってきている
詳細
詰め込み型教育だけでなく、生徒達に将来の夢やキャリアについて考えさせる内容を取り入れたいと考えている。
背景
とりあえず大学に入れば、就職がしやすいといった、大卒至上主義の傾向が強く、教育現場では既存の教育モデルを発展させるべきだとの考えに変わってきている。
備考
「ロガリズム」に関しては、日本の現在の教育改革に関心を持っており、職業観の育成について学ばれている。
ⅴ 語学教育がかなり進んでいる
詳細
2000年まではロシア語が必須科目であったが、現在は英語が必須科目になっている。私立に関しては、さらに語学教育を重要視している。
背景
社会主義の流れで、ロシア語の習得が社会進出の条件となっていたが、民主化以降、英語の導入が主となった。外国語習得は重要と考えられており、第三外国語として日本語を取り入れている私立学校も多い。
備考
「ロガリズム」に関しては、英語は必須で第三外国語に日本語とロシア語の選択制をとっており、割合は日本語選択者が60%である。
ⅵ 同一学年の年齢に幅があり、また、すべての年齢の生徒が同じ建物で学んでいる
詳細
同一学年に2歳の幅があった。
背景
2008年に学校の制度が変更になり、5-4-2制から6-3-3制に移行した。同時期に義務教育期間も変更になり、7歳~16歳から6歳~15歳になりました。しばらくの間は同一学年に年齢差がある生徒達が混在している。モンゴルでは小中高一貫教育が一般的で義務教育期間は学年を区切らず1年生から12年生まで通しで呼ばれている。
備考
「ロガリズム」に関しても、同様である。
Ⅱ ? ⅰ 日本とモンゴルの関係
詳細
日本の対モンゴル国別援助方針《2012年4月策定》
(1)鉱物資源の持続可能な開発とガバナンスの強化
(2)全ての人々が恩恵を受ける成長の実現に向けた支援
(3)ウランバートル都市機能強化
「戦略的パートナーシップのための日本・モンゴル中期行動計画《2013年9月策定》」
(1)モンゴル人の産業人材育成のため日本への留学機会を増やす
(2)モンゴル国内の工学系高等教育機関の機能を強化する《2014年3月12日決定》
→ 具体的に、円借款で75億3500万円まで援助が決定
まとめ :外交的に中露とのバランスを考慮し、また、エネルギー問題としては燃料の安定仕入先として、モンゴルをひとつの重要拠点と考えている。
ⅱ ビジネスとしての関係
詳細
(現地でのやりとり) :
・12日の打ち合わせ
ナラン先生から、『NHK総合 あさイチ 放送:4月1日(月)AM8:15~9:54を見て、ドリームマップをひとつの講義として、ネット配信の教育番組で実践している。』との話がでてきました。(http://tv.gogo.mn/video.html?id=8439)
・13日の打ち合わせ
校長先生から、『 ドリームマップは知的財産ですので慎重に対応します、学校としてモンゴル人に沿った形に作り変えていきたいと考えています。ドリームマップに関してはモンゴル語に翻訳するお手伝いなら、対応できます。』との回答がありました。
・13日の打ち合わせ
JICAの担当者から、『以前に初等教育分野に参入する企画のサポートをしましたが、進展せず、案件が頓挫してしまったことがある。そのことを考えると、初等教育機関よりも職業訓練所やインキュベーションセンターに入り込むのがいいと思います。現在、モンゴルでは初等教育よりも働きにでるまでの技術サポートの重要性も高まっているからです。管轄は教育省ではなく労働省になってくるので、アプローチの仕方は変わってしまいますが。』との意見をいただきました。
http://www.jica.go.jp/mongolia/office/activities/index.html内にある教育に関する取り組みが、JICA担当者の既存案件だと考えられます。
まとめ :すでに、テレビで見た内容をアレンジして活用していることを見ると知的財産に関しての意識は希薄である。だれとどうやって連携していくかのプラットフォーム作りが欠かせない
5 意見
教育現場普及の場合
JICAは、公立学校をメイン対象として活動し、苦戦していました。一方で、経済状態・取り組みの自由度・集まる人の質の高さを考えると、私立学校という教育現場は魅力在る市場です。特に、開催場所を提供してくださったロガリズムは初等教育機関の中で先端を目指しており、現在の新たな取り組みを模索し、情報収集に努められています。
校長先生の思いの中に、生徒達に将来やキャリアについて考えてもらう機会を作りたいというものがありました。今回のドリームマップ講義を通して、生徒達の夢を描く姿や対話型のファシリテートに多大な興味を持っていました。
ドリームマップは、生徒達にはなりたい自分をイメージしてもらう機会を提供できます。講義を行う先生達はファシリテートという手法を学べるという利点があります。ドリームマップを学ぶ講座の提供が、左記利点を教授する近道であるため、ドリームマップの概念を伝える人の育成と講座受講生の管理をする団体の創設が重要であると考えます。また、ドリームマップというブランドの維持をしながら、団体の継続と運営のための資金繰りを安定化させるためには、現地の人による現地の人の運営がいいと考えています。(下記データ参照)
そのために、初期段階として教育分野に携わっている3名(特に、バイヤルマさん、ソソロさん、ナランさん)に養成講座とアドバンス講座の提供を実施し、同時に日本と同様の法人を共同出資で設立、養成講座の展開拠点を始動させる。第二段階では、私立学校の教員もしくは教員を目指す人のためだけに現地に合わせた価格設定で養成プログラム提供を行い、ブランド力継続のため受講者管理と組織管理のルールのモデル作りを始める。
教育の底上げのためには、教師の質の向上が最優先課題で、ドリームマップの普及は生徒・教師が共に成長していくことができる唯一のツールであると考えます。
6 参考文献
・ジェトロ 海外調査部(2013年6月28日時点)
https://www.jetro.go.jp/world/asia/mn/data/mn_201306.pdf
・IMF 経済調査 (2013年)
https://www.imf.org/external/country/MNG/index.htm
・外務省 国、地域の詳細情報(平成24年5月情報)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/world_school/01asia/infoC12000.html
・論文 神戸大学教授&モンゴル教育大学講師 「モンゴルにおける教育と労働市場」(2007年)
http://www.research.kobe-u.ac.jp/gsics-publication/jics/suruga&dairii_16-3.pdf
・元山芳彰様の日記 国際協力事業機構のシニアボランテイアとして2年間モンゴル科学技術大学で経営管理指導(2006年)
http://www.zoomin.co.jp/patbank/rensai/motoyama.html#24
・JICA HP
http://www.jica.go.jp/mongolia/office/activities/index.html
・モンゴルの特許
http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/mongo/tokkyo.pdf
・総務省 統計局
http://www.stat.go.jp/data/nihon/22.htm
7 参考データ
・モンゴル版「 教育基本方針 」
「国語および外国語、科学の基礎知識を身につけ、それに基づき自らの才能、能力を開発する。そして自立するうえで必要な知識、能力、習慣を修得し、美的感覚、道徳観念を身につけ、健康で国民の義務を認識できる公正さ、協調性、愛国心を持ち、法令を遵守する。さらに当国および人類を発展させてきた伝統、文化価値を尊ぶことができる」このような人間を育成することがモンゴルの教育目的である。学校は小・中学校法に従い教育を行う義務を有し、教育活動を行ううえで父母の支援を得る。また教師は児童生徒の学業、成長に関して父母に通知し、教師・父母がお互いに、密に連絡をとり合って協力しなければならない」
・モンゴルの人口は286万人 そのうち、ウランバートル123万人が居住している。